ブラックミラーシーズン4第2話『アークエンジェル』に関する、ネタバレなしの感想や評価と、ネタバレありの結末や考察を書いています。
目次
ブラック・ミラー4-2「アークエンジェル」より
監督 キャスト情報
邦題 | アークエンジェル |
原題 | Arkangel |
監督・ディレクター | Jodie Foster/ジョディ・フォスター |
原作・脚本 | Charlie Brooker/チャーリー・ブルッカー |
主演男優 | Owen Teague/オーウェン・ティーグ |
主演女優 | Rosemarie DeWitt/ローズマリー・デウィット Brenna Harding/ブレナ・ハーディング |
動画配信サービス | Netflix |
ジャンル | 海外ドラマ/SF |
おすすめ度 | ★★★★★★★★☆☆(8点) |
エピソード2 あらすじ ストーリー
シングルマザーであるマリーは、娘のサラをある日公園で見失う。
その後必死の捜索の末サラは無事見つけ出されたが、それをきっかけに、娘を思うあまりに”Arkangel - アークエンジェル”というチップを埋め込むことを決める。
”アークエンジェル”とは、このチップを埋め込んだ子供の現在位置や栄養状況が正確に分かる上、ストレスを感知してその対象にフィルターをかけたり、視界まで遠隔で確認することができ、子供の安全を考える親心に沿って開発されたシステムであった。
これにより、子供の体調管理や安全管理が徹底的に達成できるはずであった。
しかしサラは、不自然にフィルターのかかったクリーンなだけの世界しか見られない状況の中で、次第に精神を屈折させてしまい、自傷行為を始めたため、マリーは思い直し、彼女を管理していたアークエンジェルのシステムをオフにして、端末のタブレットを屋根裏にしまいこんで忘れようとした。
時は経ち、サラは成長して、恋愛を楽しむ年頃になっていた。
母親には友達と映画を観に出かけると嘘をついて、トリックという名の男の子とロマンスを楽しんでいたが、あまりに帰りが遅いサラに、マリーは心配するあまりまたアークエンジェルを起動してしまう。
そこにタブレットを通して見えるサラの視界には、裸の男が映し出されており、卑猥な言葉で男を求めるサラの声が聴こえてきた。
それからマリーは、またもやアークエンジェルで娘を監視することを辞められなくなってしまった。
行き過ぎた親心が向かう先に、サラの本当の人生はあるのだろうか?
ネタバレなし感想・レビュー
監督はあの『羊たちの沈黙』でアカデミー主演女優賞にも輝いたジョディ・フォスター。
さすが自身も子供を持つ母親であるだけに、切実な親心と、そんな母親を持つ10代の娘のリアルな現実が、見事な演出と映像美で描き切られています。
愛するがゆえに、万全を期したい、娘を守りたい。
そういう感覚が、母親でなくとも伝わってくるような、無理なく共感を感じながら、母親側にも娘側にも感情移入させながら、なんら気持ち悪さなく鑑賞することができました。
いや、母親のやってることは”気持ち悪い”のかもしれませんが、「なんでそうなるの?」というような疑問が残るようなもやもや展開ではなく、人間の感情の流れが丁寧に描かれていて、真に迫っていて、説得力がありました。
今でも”見守りGPS”のようなものがありますね。
私が親なら絶対に自分の子供に持たせたく無いな〜
理由は、自分もやっぱり親となれば、子供が心配になるだろうなとは思うんですが、こういったものは、心配が解消されるどころか、知れば知るほど心配が募ると思うんですよね。
安全を守りたいから持たせるのではなく、安心したいから持たせる、子供の安全というよりかは、親の精神安定剤のようなものに需要があってああいう商品が開発されると思うのですが、それが全然逆効果に作用するというのは、今作品でも描かれている通りで、見なくても良いものを見て、しなくても良い心配を募らせるだけで、親のためにも子供のためにもならないと思うんですよね。
ただでさえ心配なのに、自分の視界に居ない時まで完璧に自分の意識の中で納得が行くように管理しようなんて思ったら、もう体と頭が足りないと思います。
でも便利なものがあれば、高いお金を払ってでも導入するよりも、導入しないことのほうが難しいことになってくるんでしょうね。
そして一度導入してしまうと、今度はそれから離れるのに苦労する。
子供への依存だけじゃなく、システムや機器への依存まで、二重に克服しないと、子離れが完了しないという、親にとって余計に難しい時代になってるんじゃないかと感じました。
今まさに子育てをされている方も、そうでない方も、十分興味深く最後まで緊張感を持続させて観られる良作なのではないかなと思います。
ネタバレあり結末・ラスト・考察・感想
⚠以下ネタバレを含むので視聴前の方はご注意ください。
別に悪いことじゃなくても、娘の行為をもろに見てしまったら、その衝撃たるや凄いでしょうね。
視界を盗み見れるシステムが、良い結果を招く状況なんてとてつもなく限られた状況ですよね。
ブラックミラーではよく取りざたされる技術ですね、視界を録画できたり他人の視界を見れたりできるというやつ。
問題しか起きない、って感じですよね。
あの”アークエンジェル”というシステムは開発から間も無く、欧州で禁止になったというようなくだりがありましたが、まあ冷静に考えたら、絶対その商品初めから認可されんだろうとは思うのですが、でもわかりませんよね、それくらい”親心”って、親じゃない人間からしたらぶっ飛んだ感覚に驚かされることはしばしばありますから、何歳から何歳まで限定でとか、年齢制限とかを設けたらありうるかも知れない。
アークエンジェルの一つの機能で、ストレスを感じる対象にモザイクをかけるフィルター機能がありましたが、これは絶対まずい結果しか招かないですよね。
無菌状態を保ちすぎると、体内の雑菌が少な過ぎて、すぐに腹をこわす人間が育つようなもので、クリーンなものしか見てないと、抵抗力が育たない。
しかも完全にシャットアウトされるわけではないから、好奇心は芽生え、逆に怖い物や禁止された物への関心が高まることは抑えられるわけなく、それが結果自傷行為やドラッグに彼女を走らせたと、言うこともできると思います。
でもこのフィルター機能は、Netflixにキッズモードがあるように、現代でもぜんぜんあるんですよね。
でもじゃあどこに線引きをするんだと。
どこまで強制するんだというのは、答えの出ない難しい問題ですね。
そういえばサラがアークエンジェルをインプラントされる時に、グロテスクな映像に自動的にフィルターがかかるテストで見ていた映像が、アレでしたね。
ブラックミラーシーズン3第5話「虫けら掃討作戦」で女兵士が銃を乱射しているシーン。
なぜかこういうのニヤッとなりますね。
ブラック・ミラー4-2「アークエンジェル」より
ブラック・ミラー3-5「虫けら掃討作戦」より
この物語、母親がメッチャクチャで共感できない、というわけじゃないんですよね。
冒頭の、線路の近くの公園で迷子になるシーンとか、子供の頼りなさ、危なっかしさをひしひしと感じるので、こういうシステムがあったら手が伸びても仕方ないよな〜と自然に入り込んでいける造りとなっています。
そしてシングルマザーというのもキーですよね。
母親のマリーは男で失敗して、散々辛い目に遭っている。
自分のバカさ加減は横に置いといて、娘がどういう方向に進み始めているのか我が事のように分かってしまう。
せめて娘には真っ当な幸せを築き上げて欲しいと望みたくなるんでしょうね。
ECピル(緊急避妊ピル)を気付かないように混ぜたのも、最低ですけど、やっちまいそう〜っという気持ちも分かります。
気付かれなければ、あの子の将来から物凄く大きなリスクをそっと取り除けるという誘惑に、あそこまで知ってしまった親が打ち勝てるだろうかと考えてしまいます。
でまあ、そりゃあ親心だからとかいっても許されることでは無いですから、最後全てを知ったサラがマリーを殴りつけて出て行きますが、すごく悲しいエンディングのようで、実はすごく明るい終わり方だなと思いました。
ブラックミラーのことだから、そのまま勢いで母親を死なせてしまうのかとか、出て行った後自害してしまうのかと一瞬想像しましたが、そうじゃなく、母親はあそこまで完全に娘から決別されることにより、ようやく子離れできたと思います。
そしてサラは、母親の呪縛から逃れて、間違いだらけでも自分の人生を歩み始め、その後何年か経って、サラが母親となったら、きっとこの時のマリーの行いについて、全てを許す時が来るんだろうなということが、想像することが許される余地のある終わり方でした。
1話めの『宇宙船カリスター号』は、ハッピーエンドのようで全然救いようの無い鬱な終わり方だったのに対し、この話はバッドエンドのようで、明るい未来を示唆しているというのが興味深かったです。
第三話『クロコダイル』のレビュー記事も合わせてご覧ください。
第一話『宇宙船カリスター号』のレビュー記事も合わせてご覧ください。
ブラック・ミラーレビュー記事まとめ
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