ブラックミラーシーズン4第1話『宇宙船カリスター号』に関する、ネタバレなしの感想や評価と、ネタバレありの結末や考察を書いています。
目次
ブラック・ミラー4-1「宇宙船カリスター号」より
監督 キャスト情報
邦題 | 宇宙船カリスター号 |
原題 | USS Callister |
監督・ディレクター | Toby Haynes/トビー・ヘインズ |
原作・脚本 | Charlie Brooker/チャーリー・ブルッカー William Bridges/ウィリアム・ブリッジズ |
主演男優 | Jesse Lon Plemons/ジェシー・プレモンス |
主演女優 | Cristin Milioti/クリスティン・ミリオティ |
動画配信サービス | Netflix |
ジャンル | 海外ドラマ/SF/胸糞 |
おすすめ度 | ★★★★★★★★☆☆(8点) |
エピソード1あらすじ ストーリー
主人公ロバート・デイリーは、カリスター社のCTO(最高技術責任者)で、ネットワークで繋がれた仮想現実でプレイする没入型ゲーム『INFINITY - インフィニティ』のプログラムを開発し、CEOのジェームズ・ウォルトンと共同で、カリスター社を巨大な会社に成長させた立役者であったはずだったが、内気な性格や恵まれない容姿などの要因によって、会社内でもまったく重要視されず、影が薄く、ウォルトンからも社員たちからも軽んじられ、肩身の狭い社会生活を送っていた。
そこで彼は、自分が作ったプログラムを改変し、ネットと繋がっていない限定された外からの干渉を受けない仮想空間の中で、自分が完璧な支配者であり、主人公である自分だけのゲームを作り上げた。
しかもそのゲームに登場するキャラクターたちは、現実の世界で生きる人間のDNAを採取して作り出したデジタル・クローンであった…
ある日彼の元に、ナネット・コールという名の新入社員の女性が訪れる。
彼女はデイリーの作ったプログラムのコードに感動し、彼を尊敬してこのカリスター社に入社を希望していた。
彼女に賞賛され、デイリーは浮かれていた。
しかしローリーという女性社員が彼女に「デイリーに気があるの?」と質問したところ「まさか無いわ。彼のコードだけ。そんな気は全然無い。」と話しているのを聞いてしまう。
「優しくしすぎると勘違いしてジロジロ見られるわよ」というローリーの忠告後は、とたんに腫れ物に触るようによそよそしくなってしまうナネット。
デイリーは彼女が飲み物を飲んだカップを密かに入手し、唾液から彼女のデジタル・クローンを作り上げて彼の世界に閉じ込めた。
デイリーの抑圧された心が生み出した彼にとって完璧な世界で、ナネットやその他デイリーが気に入らなかった人間たちのデジタル・クローンに囲まれ、彼の自己実現とも復讐とも取れる物語が始まる。
ネタバレなし感想・レビュー
社会の中でうまく認められず、自分を自由に表現できず、バカにされて肩身狭く、満たされない思いばかり溜めて生きなければいけないような人たちにとっての、一つの妄想や行き場のない怒り、欲求の行き着く先という感じの、設定の物語ですね。
簡単に言うと、バカにした奴らに、自分を認めさせてやりたい、服従させてやりたい、そういう欲求を実現できるゲームを作ってみた、という話。
人に腹がたった時、厳しい現実に打ちのめされた時、屈辱的なことがあった時、どうしても手に入らない対象がある時など、誰もが脳内で一度は妄想してしまうような内容なのでは無いでしょうか。
ゲームの中と言っても、そこに自他共に感覚があったら、それはもう現実と変わらない苦楽が存在する上に、デジタルの世界にもしも人の魂がアップロードできたら、半永久的に人が生きていられてしまうという状況が出来上がってしまいます。
それをもし悪用されると、その被害者は、現実空間ではありえないような恐ろしい目に遭わされてしまうという危険な可能性も満ちています。
そういう、怖い、キモい、でも興味を引かれる、というような内容のお話で、一言で言い表すと”オタクのハイテク復讐”とでも言いましょうか、そんな感じの作品です。
さてそのハイテク復讐をしかけられた人間たちが、どうなってしまうのか?
その結末には、ブラックミラー らしい後味の悪さが、胸糞の悪さが、ヒリヒリと効いています。
筆者の評価としては星8つ。
終始ドキドキしながら惹きつけられてラストまでしっかり楽しませてもらえました。
監督はあの『SHERLOCK』も手がけたトビー・ヘインズ。
見て後悔する、ということはまあ無いんじゃないかと思える印象でしたので、視聴しようか迷われるようなら、見てみることをおすすめします。
ネタバレあり結末・ラスト・考察・感想
⚠以下ネタバレを含むので視聴前の方はご注意ください。
この物語は、一見なんとなく見ていると、勧善懲悪のものすごくハッピーエンドな物語に思えるんですよね。
主人公のデイリーは、自分のゲームの中に気に入らない奴(のデジタル・クローン)を閉じ込めて、服従させ、貶めたり、ひたすら自分を褒め称えるように仕向けたり、まさに神として君臨して相手の尊厳を無視して振る舞います。
そんなひたすら悪のデイリーに、被害者たちが一致団結して立ち向かい、そして彼を打ち負かし、自由を手に入れる、という筋書きです。
そしてデイリーは、自分の作り出した宇宙に閉じ込められ、一人っきりで惨めに終わっていき、さらにはゲームの中から出てくることもできず、おそらく現実のデイリーもそのまま亡くなってしまう、というような最悪の結果になったようでした。
自業自得、悪はかならず裁かれる、間違ったことはしちゃいけないんだ。
そういうふうにも取れるのですが、しかし被害者目線ではなく、デイリー目線で物語を見ていくと、物凄く辛いだけの、惨めで、悲惨な結末です。
デイリーをこんな凶行に走らせたその原因は何だったのか?
彼を不当に扱い、軽んじ、貶めるように接してきた人たちは、結局この物語では、まったくの無傷、それどころか、彼の苦しみや悔しさ、惨めさに気付いてさえいません。(デジタル・クローンたちは苦しみましたが、現実の彼らはなんら実害が無かった、という意味です。)
ナネットは脅されて指示され動いたので、その点では実害がありましたが、デイリーの思いとはまったく関係の無いところでの出来事で、デイリーの気持ちは一切彼女に伝わっていません。
脅されたからやったけど、意味はわからない。
デイリーの苦しみ、悔しさは、ナネットには全然伝わらずじまいでした。
現実世界で彼を苦しめた人たちは、彼の気持ちを一切知ることなく、表面的には、あいつなんかとうとう自分でやっちゃったみたいだぜ、まあ居ても居なくても変わらないけどな、的な結末となりました。
それどころか、コピーされた人格たちは、最後美しい宇宙に感動し、その世界を味わうべく冒険をスタートさせます。
しかし、その世界はデイリーが作り出した世界。にも関わらず、彼らはデイリーの本当のすごさに気付いている風でもありません。
デイリーはただ一人苦しみ、自分の宇宙を作り出して、そこに救いを求めたあげく、そのプログラムに取り込まれてしまった。
そこにはたしかにデジタル・クローンという被害者はいましたが、現実世界だけを眺めてみると、ただ一人で苦しみ、一人でもがき、彼を苦しめた人たちには何も彼の思いは伝わらず、いかなる言葉も残せずに一人で逝ってしまった。
つんつるてんの体を作ったり、舌はご法度、なんていう、なんとも悲しい世界観設定も、切ない哀愁が漂っています。
その感じ、どこまでも救われない状況に、ブラックミラー 的な皮肉のエッセンスを感じました。
ちなみに、登場した黒人女性、どこかで見たことあるなと思った方、いらっしゃったのではないでしょうか。
シーズン3第1話『ランク社会』の空港の女性です。
ブラックミラーシーズン3第1話より
シーズン3第六話のレビュー記事も合わせてご覧ください。
シーズン4第二話『アークエンジェル』の感想はこちら。
【まとめ】ブラック・ミラー関連記事
『ブラック・ミラー』全シーズンのレビュー記事は、こちらでひとまとめにしております。
気になるエピソードがあったらぜひそちらもご覧ください。
ブラックミラーが観れる動画配信サービス
ブラックミラーはNetflixオリジナル作品で、Netflixでしか視聴できません。
まだNetflixに登録されていないというかたは、ぜひ無料トライアルを試してみてください。
また、メジャーな動画配信サービスで、おすすめのサービスをランキング形式でご紹介している比較記事もございますので、ぜひご活用ください。
シーズン4『宇宙船カリスター号』予告編youtube動画
『USS Callister』予告編