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映画『ブレードランナー』ネタバレ考察/あらすじ/感想/評価 | ファイナルカット版レビュー


映画『ブレードランナー』(旧作)ファイナルカット版の感想や評価、ネタバレを含む考察などを加えたレビュー時期です。

 

*続編の新作映画『ブレードランナー 2049』の感想・評価やあらすじをご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。

『ブレードランナー 2049』感想と評価「思ったよりも面白くない」 | 最新作映画レビュー

 

目次

 

ブレードランナーファイナルカット
ブレードランナーファイナルカット日本版ポスターより

 

映画基本情報・解説

 

劇場公開日 2007年11月17日
上映時間 117分
邦題名 ブレードランナー:ファイナル・カット
原題名 Blade Runner:The Final Cut
監督・ディレクター Sir Ridley Scott/リドリー・スコット
原作・脚本 Philip Kindred Dick/フィリップ・K・ディック
Hampton Lansden Fancher/ハンプトン・ファンチャー
David Webb Peoples/デヴィッド・ピープルズ
主演男優 Harrison Ford/ハリソン・フォード
主演女優 Sean Young/ショーン・ヤング
ジャンル SF/ファンタジー/フィルム・ノワール/サイバーパンク
おすすめ度 ★★★★★★★★☆☆(8点)

 

映画『ブレードランナー』とは?”ブレードランナー”の由来・意味

 

 『ブレードランナー』とは、1982年に制作されたSF映画。

サイバーパンクの金字塔”との呼び声高い傑作で、今日に至るまで根強いロングラン人気を誇っている。

監督は『エイリアン - Alien』『ブラック・レイン - Black Rain』『オデッセイ - The Martian』などのリドリー・スコット。原作はフィリップ・K・ディック。

 

1982年は、同年に発表されている大友克洋の漫画『AKIRA』など、サイバーパンクの魅力が詰まった大ヒット作が同時に生まれる年となった。

 

押井守監督の『攻殻機動隊 - GHOST IN THE SHELL』『イノセンス』などへの影響も感じられます。

 

タイトルとなっている”ブレードランナー”という言葉は、小説『The Bladerunner』(著者:アラン・E・ナース)の中で使われる用語で、非合法医療器具(Blade)の密売人のことを現す。

 

リドリー・スコット監督のインタビューでは、デッカードの職業名(原作では”バウンティ・ハンター)を考えている時に、”ブレードランナー”という名称を見つけ、名前のみを拝借したそう。

 

つまり”ブレードランナー”という名称に、深い意味や、本編内容との繋がりはありません。

 

”ブレードランナー”というタイトルに決定する前は『デンジャラス・デイズ - Dangerous Days』という仮名がつけられていたそう。

デンジャラス・デイズのまま行かなくて本当に良かったなと思います。

 

原作の”アンドロイド”という名称は、いささか機械的すぎるという理由で、クローン技術で用いられる専門用語”細胞複製(レプリケーション)”にちなんで、”レプリカント”という名称を造語したそう。

考えたのは脚本家のデヴィッド・ピープルズ。

 

原作との違いは?

 

モデルとなった原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(著者:フィリップ・K・ディック)と本作映画『ブレードランナー』との主な違いは、デッカードのキャラ設定(妻が居る等)や、世界観設定、レプリカントという言葉は使われず、原作ではアンドロイドと呼ばれていること、敵として登場しデッカードと死闘を繰り広げるロイ・バティが原作ではそれほど重要キャラではないこと、本作のテーマが”レプリカントの苦悩”であるのに対し、原作のテーマは”人間の苦悩”であることなどが挙げられます。

  

原作の世界観は、もっと終末的であり、デッカードというキャラクターは、本作でももともとヒロイックではありませんが、さらにもっと落ちぶれていて、葛藤の多い人間像が描かれます。

 

原作をお読みでない方は是非これを機会にチェックしてみてください。

フィリップ・K・ディックの世界は、ハマる人にはたまらない!

そんな彼の精神世界に初めて触れるのに、とても適した入門書と呼べるような作品となっています。

 

キャスト・出演者

 

俳優名 キャラクター役名
Harrison Ford/ハリソン・フォード リック・デッカード
Sean Young/ショーン・ヤング レイチェル
Rutger Hauer/ルトガー・ハウアー ロイ・バッティー
Daryl Hannah/ダリル・ハンナ プリス・ストラットン
Edward James Olmos/エドワード・ジェームズ・オルモス エドワード・ガフ
William J. Sanderson/ウィリアム・サンダーソン J・F・セバスチャン
Joseph Turkel/ジョー・ターケル エルドン・タイレル
Brion James/ブライオン・ジェームズ リオン・コワルスキー
Joanna Cassidy/ジョアンナ・キャシディ ゾーラ・サロメ

 

ストーリー・あらすじ

 

時は2019年、舞台はロサンゼルス。

環境汚染で厚い雲に覆われ、地平線は不気味にオレンジ色に光を放っている。

 

開拓中の惑星で奴隷として使われていた6体のレプリカントが、スペースシャトルをジャックして地球に潜入し、2体が処理され、未だ4体が潜伏中との報が入り、退役したはずのデッカードが強引に捜査に引き出されることに。

 

脱走したレプリカント、ネクサス6型を開発したタイレル社を訪れるデッカード。

レイチェルが秘書として彼の対応をするが、彼女もまたレプリカントであった。

 

レプリカントはあまりに高性能な脳を持つため、数年経つと感情を持ち始めるという弊害があったため、この危険性にあらかじめ対処するために、レプリカントには4年という寿命が設けられていた

 

タイレル博士は、人間以上のレプリカントを作りたいと話し、レイチェルはその試作品だと語った。

 

デッカードはその後潜入中のレプリカントが泊まっていたホテルの一室で、謎の鱗と写真を発見する。

 

脱走したレプリカントたちは、タイレル社の研究所でハンニバル博士を脅し、タイレルに近づくための重要人物J・F・セバスチャンについて聞き出す。

 

女性レプリカント・プリスはこのセバスチャンに取り入り、彼の自宅に招き入れられる。

 

帰宅したデッカードを、待ち伏せしていたレイチェル。

レイチェルは自分をレプリカントだと自覚しておらず、危うい記憶に揺れる自分の存在への疑問に動揺してタイレル社から飛び出してきていた。

子供の頃の写真を見せて、自分はレプリカントかと問うレイチェルに、それは埋め込まれた記憶だと言うデッカード、悪い冗談だと訂正してみるが、彼女は涙を流して去っていった。

 

ユニコーンの白昼夢を見るデッカード。

手に入れた手がかりの写真を調査すると、鏡に映った女性と首元に鱗のような模様が見えた。

 

もう一つの手がかり”鱗”を調査すると、それが人工蛇の鱗であることが分かり、所有者まで行き着くが、彼からはなんの情報も得られず、調査は頓挫しかける。

 

そこに蛇を使ったショーが始まり、ダンサーとして潜り込んでいたレプリカントの一人ゾーラを発見する。

 

組合の人間を扮して彼女を調査しようとするが、ブレードランナーと勘付いて逃走するゾーラ。

追い詰めたデッカードは、ブラスターを放ち、彼女を解任(処理)する。

 

そこにガフとブライアントが現れ、あと4人だなと言う。

3人ではと反論するデッカードに、レイチェルが解任リストに新たに加わったと話す。

 

その後ゾーラがやられるのを目撃していたレプリカントの片割れリオンに襲われる。

一瞬にして窮地に立たされるが、すんでのところでレイチェルに助けられる。

その後二人は、デッカードのアパートで結ばれる。

 

一方セバスチャンに接近したプリスは、ロイと合流し、セバスチャンを脅す。

 

セバスチャンの案内でとうとうタイレル博士にコンタクトを果たすが、ネクサス6型の延命という目的は不可能であると知り、絶望してタイレル博士とセバスチャンを害する。

 

報を受けてセバスチャンの部屋まで来たデッカードは、そこでプリスと対決し、これを解任する。

 

そこにロイがやってくる。

 

デッカードは、すべての動きを見透かされたようにロイに一方的にいたぶられ、追い詰められる。

必死に逃げまわり屋根から飛び移るが、飛び越えきれずに鉄骨にぶら下がった状態となってしまう。

 

とうとうロイに完全に追い詰められたデッカード、耐えきれず手を離して落下する、次の瞬間、ロイはデッカードの腕を掴み、救い上げた。

 

そして「その時が来た。」そう言って静かに目をつぶって絶命する。

 

アパートに戻ったデッカードは、レイチェルを連れてエレベーターに乗りこんでいった。

 

感想・ネタバレ解説・ラストシーン考察

 

冒頭、オープニングでレプリカントのリオンが、不思議な装置を前に、”フォークト・カンプト方式(VKテスト)”と呼ばれるテストを受けて、捜査官ホールデンを害します。

 

測定器で眼球を観察しつつ幻想的で暗喩的な質問形式で進められるこの検査は、原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に登場する、感情移入能力を判断するのに使われる手法で、アンドロイド(レプリカント)は感情移入能力が低いとされていて、この質問への反応で、人間かどうかがほぼ確実に判定できるとされています。

 

作中のセリフから参照すると、普通は20〜30くらいの質問でレプリカントだと特定できるようです。(特殊な例として、タイレル博士がレイチェルは特別に作られたと言っているが、その証拠に、レイチェルへの質問は100問以上かかってようやくレプリカントだと判定できた。)

 

これは逆を返すと、人間とレプリカントの境界が、いかに曖昧かということが言えますね。

たとえどんなにボディや脳が作り物であったとしても、感情移入ができるレプリカントが現れたら、それはもう”人間”だと言ってしまえるということですし、作中でもタイレルは、レプリカントは製造後たった数年で感情を持ち始めるとも説明しています。

 

ホールデンが害されたことにより、引退したデッカードが呼び戻され、半ば強制的に捜査を開始させられます。

 

空飛ぶ乗り物、ポリススピナーでピラミッドを思わせる壮大なタイレル社の本社に赴くシーン。

原作では特に、生き物が絶滅しかかっていて、本物の動物が非常に貴重で高価な物として扱われますが、本作でも、本物の生き物は出て来ず、人工のフクロウが登場します。

 

この人工のフクロウにも使われる手法ですが、作中に出てくる本物じゃない生き物には、一瞬赤目効果が現れます。

 

デッカードはレプリカントなのか?

 

「デッカード=レプリカント」という説が、明確に確定するシーンはありませんが、リドリー監督の意向では、デッカードはほぼレプリカントで間違いないという路線で演出を広げていて、デッカードに赤目現象があったり、レイチェルに「貴方も自分でテストを受けたことがある?」と聞かれたり、記憶に固執するレプリカントは写真を集める癖があるが、デッカードの部屋のピアノの周りにもたくさんの写真があることや、ユニコーンの白昼夢を何故かガフが把握しているかのような、意味深な折り紙が置き去りにされていたりします。

 

ユニコーンの意味・考察

 

ぱっと見意味不明なあのユニコーンについてもう少し詳しく解説・考察を加えると、監督は当初からこのシーンをエンディングか作中に挿入することに苦心していたようです。

しかし様々な背景から断念し、試写版、劇場公開版までは、このシーンはカットされたままでした。

 

劇場公開版では、デッカードがユニコーンを見るシーンが無いため、あのユニコーンの折り紙は、ただ折り紙を折る癖があるガフが、レイチェル(とデッカード)を見逃したという印というオチとしてしか機能していなかったのですが、ユニコーンの白昼夢を挿入することによって、デッカードにしか知り得ないユニコーンというシンボルを、ガフが把握しているかのように捉えることができ、デッカードの記憶が、複製されたものや付け加えられたものであることが示唆されることになります。

 

また、ラストシーン、ガフがデッカードに銃を投げてから言うセリフ、字幕では単に「彼女も惜しいですな、短い命とは。」とだけ翻訳されていますが、英語では「It's too bad she won't live. But then again, who does?です。

 

日本語で簡潔に意訳するのがちょっと難しいですが、つまりデッカードはブライアントからレイチェルの解任を命令されていたわけですから、レイチェルは寿命という意味でも、デッカードに解任されるという意味でも”短い命”だとガフは言っているわけですが、同時にガフは、デッカードがレイチェルを解任などしないと見抜いている。

 

「who does?(誰が解任などするだろうか?)」と、デッカードが、彼女と逃避行に走ることを仄めかしています。(二人が逃げることを見逃しているように聞こえます。)

 

ガフの折り紙の意味

 

ガフの折り紙のシーンは作中3度登場します。

それぞれは、全てデッカードをからかう、皮肉を言うような意味合いがあります。

 

  1. 鳥(チキン):仕事を請け負わないで去ろうとするデッカードを臆病だとなじっている。
  2. 興奮している男:レイチェルに惚れた、もしくはやりたくない仕事に次第に熱中しているデッカードに対する揶揄。
  3. ユニコーン:1.寿命の迫ったレイチェル(及びデッカード)たちが手を取り合って逃げることに対する、存在しない物(絶対に叶わない夢)を追っているという皮肉。2.デッカードしか知り得ないユニコーンというシンボルを見せることにより、デッカード自身がレプリカントだという事実を仄めかす。3.今は見逃すが2人とも解任される運命、という警告。

 

デッカードは結局、続編『ブレードランナー2049』で30年後も生きていることから、レプリカントでは無かったともとれますが、『ブレードランナー』オリジナル劇場公開版とインターナショナル版では、試写会で「解りにくい」と不評だったため追加したデッカードの独白セリフでラストシーン、エンディングでこう述べます。

 

「レイチェルは特別なレプリカントだから寿命が限られていない。

 

ではデッカードも特別なレプリカント(ネクサス7型)であるという想像を膨らませることも可能だということです。

 

ただし、監督が「デッカード=レプリカント」説を気に入り、そのほうが話を魅力的に膨らませやすいと感じていて、そのように演出していたとしても、制作側も観客側も、デッカードを人間として応援したいか、レプリカントとして解釈したいかは、個人の好みによるところが大きく、作品中に決定的に、デッカードの正体を位置づける表現は為されておりません。

 

また、デッカードが人間かレプリカントかという事実は、この作品の根底のテーマには、さほど大きな意味を持っていないということも言えます。

 

むしろ、デッカードが人間とも取れるし、レプリカントとも取れる、その曖昧さ、人間とレプリカントが紙一重の存在である危うさ、人類が科学技術を発達させて、命というものを複製、生成できるようになった暁に強烈に直面する、”人間とは何か?”、”命とは何か?”という哲学的な命題、苦悩こそが、原作へのオマージュ、この作品の最大のテーマであると感じます。

 

新宿歌舞伎町をイメージしたとされるネオンが煌びやかで退廃的な酸性雨降りしきる街の情景が美しく、その壮大な夜景を見ると、CG技術が未だ確立されていなかった時代に作られた映画ということに驚かされます。

リドリー監督の美術へのこだわりが凄く、細部まで作り込まれた背景が醸し出す世界観は圧倒的で、そのビジュアルの美しさ、魅力に引き込まれます。

模型を使った特撮で作られた、最後のSF作品と言われています。

 

夢幻的な効果音や、和の要素を感じる音楽や、民族的な要素がふんだんに取り入れられたBGM、街ゆく人、屋台の雰囲気、芸者の動く電光掲示板、登場するキャラクターの衣装やメイクなども、非常に印象的です。

 

強力わかもとという言葉もすごい響きですね(笑

”ゴルフ用品”という看板も目につきますが、この世界にゴルフコースなんていう緑豊かな場所があるのか疑問です。

 

あと日本語が本当にたくさん使われていますね。

街の雑踏の中からも「なんか変なものが〜」とか「あれみろよ」などと聞こえてきて、はっとします。

 

作中の未来という設定が、現代となった今、この作品を改めて観て面白いと思うのは、1982年、あの頃の人たちが思い描いた未来像と、本当に現実となった今の未来の姿の食い違いです。

 

あの頃の人にとっては、電話を持ち運ぶ、パソコンを携帯して持ち運ぶ、スマホのような発想や、インターネットなどの概念は、どこを切っても無かったのでしょう。

それは、空飛ぶ車よりもはるかに想像の斜め上を行く技術と言えるのかもしれません。

 

また、妙に柄の光る傘を持っていたりする人たちを見て、たぶん人類は、この後数十年かけてものすごいAIを生み出したりするんでしょうが、数十年どころか数百年たっても、相変わらず傘をさして歩いているんだろうなということをなんだか思い浮かべました。

 

全体的に面白いと思って観ていましたが、筆者がいまいち入り込めなかった部分の批評としては、デッカードとヒロインレイチェルのあまりに唐突な恋愛要素でしょうか。

どこでデッカードがレイチェルに惹かれ、どこでレイチェルは、このなんか弱いデッカードを特別に感じたのでしょうか?

その辺がいまいちわからない…

 

続編『ブレードランナー2049』の中で、ウォレスのセリフの中で、「デッカードとレイチェルが結ばれるのは仕組まれていたのでは」というものがありますが、仕組まれていたのは良いとして、ちゃんと惹かれ合う描写は欲しかったです。

でないと、二人が結ばれることに感情移入できなかったからといって、筆者をレプリカントだとは決めつけられないですからね。

 

急にガン!!と壁に叩きつけて「キスしてと言え」とか言われても、ええ?!怖っ!!と普通の女性ならなると思いますが。

あのラブシーンは、正直軽く引きます。

ちょっとしたエロシーンみたいになっています。

 

実際あの演技中、ハリソンフォードのあまりの攻撃的な仕打ちに、レイチェル役のショーンヤングは「怒りを覚えた」と後に語っていたそうです。

 

意味もなく女性にやけに攻撃的に描かれるデッカードというキャラクター、ハリソンフォード自身はどう思っていたのでしょうか。

少なくともブレードランナーという作品自体には、監督と揉めたという理由もあり、あまり気に入ってはいないようです。

 

逃げるゾーラを後ろから撃つシーンも、あのガラスを幾枚も割りながら倒れるシーンがとても印象的で、私は好きなんですが、なんでも映画史上初めて丸腰の女性を後ろから撃った主人公などという不名誉な称号が与えられているそうです。

 

あと、ゾーラを発見するくだりが、あまりに偶発的すぎて、都合が良すぎるのと、デッカードの捜査能力が感じられない残念な感じが残りました。

 

また、対照的にものすごくカッコいい悪役、ロイ・バッティ

かなり怖いキャラにも関わらず、これだけ愛されるというのはなかなか他に類を見ないですね。 

 

ロイもリオンも、相手を害する時、執拗に目を狙ってやたらグロいのですが、作品の冒頭で画面いっぱいの瞳のショットもありますが、ロイの最後のセリフで「俺はお前たち人間が信じられないような光景を見てきた。」と言っていますし、レプリカントの眼球を作っている工学者ハンニバルに対して「お前に俺が見てきたものを見せてやりたい。」などと言っていることから、瞳(が見せる光景)に対する人一倍の憎しみが見て取れます。

 

また、その人が見てきたもの、それによって構成される”記憶”が、自分を自分たらしめる曖昧な境界線で、目を潰すという行為は、その人の見てきた生を潰すということを、象徴しているような行動なのかもしれません。

 

また、ブレードランナーという作品を通して、”目”は一つの重要なシンボルとなっていて、様々なシーンで瞳をフィーチャーしています。

 

その一部を挙げるならば

  • オープニングの瞳のショット
  • シリアルコードが記されたレプリカントにとって忌々しい自分の右目
  • フクロウの大きな瞳
  • レプリカントの赤目現象
  • タイレル博士の瞳を強調するような眼鏡
  • VKテストで測定されるのは目
  • 目を潰そうとしてくる攻撃方法

などです。

細かい描写を取り上げると、他にもセバスチャンの部屋でガラスの目玉を弄ぶロイや、プリスがぐるりと眼球を動かして白目を見せたりするシーンなどもありますね。

 

さてグロく残虐なロイですが、クライマックスでのデッカードとの対決シーンの結末のセリフは、映画史に残る名言として、人々の記憶に焼き付いています。

 

名シーンでのあの名台詞は、デヴィッド・ピープルズの脚本を、俳優ルトガー・ハウアーがその場の演技に合わせてアレンジしたものだそうで、このアドリブ演技は、映画ブレードランナーを後世まで残る名作たらしめた大きな要因の一つであると言えます。

 

特に最後のフレーズ

 

「All those moments will be lost in time, like tears in rain.」

 

は、命の終わりを確信したロイの悲哀に満ちた表情とともに、観る者の心の奥底まで沁みてくる美しさと力の満ちた言葉でした。

 

ちなみに全文を転載させていただくと、次のようになっています。

 

I’ve seen things you people wouldn’t believe. Attack ships on fire off the shoulder of Orion. I watched C-beams glitter in the dark near the Tannhäuser Gate. All those moments will be lost in time, like tears in rain. Time to die.

 

俺はお前たち人間が信じられないような光景を見てきた。オリオン座の傍で炎を上げる戦艦。タンホイザー・ゲートの近くの暗闇に瞬くCビーム。これら記憶も時とともに消えるだろう。雨のなかの涙のように…その時が来た。

 

また、白い鳩を持って飛ぶシーンも、ルトガー・ハウアーのアイデアだそうです。

そのことに言及して、自身のインタビューで次のように語っています。

 

「あんな風に命が終わるのもいいと思ったんだ、まるで電池が切れたようにね。

凄惨なところはどこにもなく、白いハトを手放した時、体から魂が去る瞬間が分かるから。」

 

彼がこの作品に残した功績は計り知れないですね。

 

その後バッカードとレイチェルはどうなったのか?

ハッピーエンディングがカットされたということは、視聴者の想像力に任せるというリドリー監督の難しいメッセージなのでしょう。

 

そして物語は、渡辺信一郎監督によるスピンオフ短編アニメ『ブラックアウト 2022』(無料動画)へと引き継がれ、2049へと繋がります。

 

続編映画『ブレードランナー2049』のレビュー記事も書いてます。

よかったらそちらも合わせて読んでみてください。

『ブレードランナー 2049』感想と評価「思ったよりも面白くない」 | 最新作映画レビュー

 

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ブレードランナー ファイナル・カット予告編(日本語字幕)

  

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オリジナル劇場版・ディレクターズカット・ファイナルカット各バージョン結末の違いなどまとめ

1982年に公開された初期ブレードランナーには、オリジナルの劇場公開版の他に4つの種類の編集バージョンが存在します。

 

  • 試写版(ワークプリント版)
  • 劇場版(オリジナル)
  • 完全版(インターナショナル劇場版)
  • 最終版(ディレクターズカット)
  • ファイナル・カット

 

まず試写会で公開されたワークプリント版は、全体的にイメージが暗く、悪役のはずのキャラクターに同情的で、しかも、ハッピーエンドでは無かったため、当時の観客の反応が芳しくなく、全体的な修正が加えられることとなります。

 

あまりに解りづらいので、退屈、つまらないと感じる人も少なくないでしょう。

 

実際、今ではカルト的人気を誇る、伝説的な作品として知られていますが、興行収入は思うように上がらず、興行的には失敗とされているほど。

 

オリジナル劇場公開版では、分かりにくいと不評だったため、デッカードの心情や状況の説明をするためのモノローグが各所に挿入されます。

また、いくつかの暴力シーン・残虐的シーンがカットされ、ラストシーンはデッカードとレイチェルが大自然を旅するという、ハッピーエンディングのシーンが追加されます。

 

ちなみにこのラストシーンは、監督が撮影したものではなく、映画『シャイニング』(監督:スタンリー・キューブリック)で山間部を空撮した文字通り”とってつけた”シーンとなっています。

 

インターナショナル劇場版では、オリジナル劇場版でカットされたいくつかの残虐なシーンなどが復活。

 

そして劇場公開から10周年を迎え、ファンの間で監督が本来意図したワークプリント版が取りざたされるようになり、その声に応える形でリリースされたのが、オリジナルのエンディングで、冗長なデッカードの独白ナレーションなどをカットしてリメイクされたディレクターズカット版です。

 

このバージョンでは、「デッカード=レプリカント」説をより強固に示唆するための、ユニコーンの白日夢シーンが追加されています。

当初からこのユニコーンのシーンは、エンディングや作品のどこかで挿入するべく監督は試行錯誤していたそうですが、スタジオから曖昧で解りにくい(芸術的すぎる)と批判がつき、強制的にボツにされていました。

 

92年に公開されたディレクターズカット版にデジタルリマスターなどの再処理が施され、リドリー監督自ら編集し、さらにクオリティを高めたのが、25周年にあたる2007年に発表されたファイナル・カット

 

もし、ブレードランナーを観るのは初めてだけどどれを見れば、どれから見ればいいかなと迷われていらっしゃるなら、クオリティの面からも作者の意図的に言っても、リドリー監督の文字通り決定版、ファイナルカットをお薦めします

 

豊富なメイキング映像を含む、コレクターズボックスに同梱されている、試写会でのワークプリント版では、カットされて意味不明のままだったうどんの注文の際の「2つで充分ですよ」の謎が分かる作りになっています。

 

全バージョンを比較して観るのも、興味深いかもしれません。

 

続編のシリーズ新作映画『ブレードランナー 2049』についても感想や評価のレビュー記事を投稿しています。

よかったらそちらも合わせてチェックしてみてください。

『ブレードランナー 2049』感想と評価「思ったよりも面白くない」 | 最新作映画レビュー

 

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