ブラックミラーシーズン5『バンダースナッチ』に関する、ネタバレなしの感想や評価と、ネタバレありの結末や考察を書いています。
目次
ブラック・ミラー5「バンダースナッチ」より
監督 キャスト情報
邦題 | バンダースナッチ |
原題 | Bandersnatch |
監督・ディレクター | David Slade/デヴィッド・スレイド |
原作・脚本 | Charlie Brooker/チャーリー・ブルッカー |
主演男優 | Fionn Whitehead/フィン・ホワイトヘッド |
主演女優 | 該当なし |
動画配信サービス | Netflix |
ジャンル | 海外ドラマ/SF |
おすすめ度 | ★★★★★★☆☆☆☆(6点) |
ネタバレありあらすじ ストーリー
プログラマーの卵である主人公のステファン・バトラーは、ジェローム・F・デイヴィスの著書『バンダースナッチ』を元にしたゲームのデモ版を持って、憧れのプログラマーであるコリン・リットマンが所属している有名なゲーム会社『タッカー社』に面接に向かう。
彼の作ったゲームは高評価を受け、タッカー社の全面的な援助を受けて、開発に取り組むようオファーを受ける。
ここで彼がこのオファーを受けるか受けないかは、なぜか視聴者である私たちが決めることができる。
そしてその後も、幾度となく彼の行動の選択を視聴者が決めることになる。
主人公のステファンは、その選択に弄ばれ、だんだんと現実と妄想の区別がつなくなってくる。
父親は精神障害を患う息子をカウンセリングに通わせ、ステファンは抗うつ薬を飲みながら『バンダースナッチ』のプログラミングにひたすら没頭する日々を送る。
カウンセラーのヘインズ医師とのやりとりの中で、彼の精神障害は、幼い頃母親を亡くしたことに起因することがわかる。
彼が幼い頃行なった、ささいな選択のミスへの消せない後悔と、私たち視聴者が選択する不可解な2択が、彼の運命をどのように導くのか…?
ネタバレなし感想・レビュー
(1回目視聴後の感想)
ただいま何の予備知識もなく、素直に1回目の視聴を終えたところでこの文章を書いております。
この作品は、非常に斬新なシステムを取り入れており、動画を視聴中の各所で選択肢が出てきて、視聴者がその2択のどちらかを選ぶことによってストーリーが分岐し、進行していくという、まるでアドベンチャーゲームやサウンドノベルのような作りになっており、ネットフリックスではこれを「インタラクティブ映画」と表現しています。
動画のタイムラインが存在せず、クリックしてジャンプすることができません。
エンディングを見るためには、一つ一つ選択肢を選んで、その結果がどうなるかを確かめるしか無い、という造りになっていますので、ストーリーどうこうを置いておいても、それだけでも楽しめる、面白い次世代の作品となっています。
私が1周目、適当に思った通り選択肢を選んでいった結果たどり着いた結末は、たぶんただのバッドエンドだったのかなという感じで、謎は深まるまま、なんら解決感を感じないままに終わりました。
ですので、考察的なことは一切できません。
とにかくほとんどの方が1回目の視聴を終えて感じられるであろう感覚は「とりあえず2回目見るしかないか…」というものだと思います。
面白いとか、びっくりとか、意外とか、そういうのはあんまりありませんでした。
とにかくもっと情報を集めて、この作品の要素をどんどん知ってみないことには、感想も出てこない、という感じで、1周目で満足できるような代物ではありません。
良い意味では、何度も見たくなる作品。
悪い意味では、一回見ただけでは何にも感じない作品と言えるでしょう。
たぶん1回見ただけでめんどくさくなってもう見ないままになってしまう、という方も多いかもしれません。
私はまだ2回目を見ていない状態ですので、今後どういう感想になってくるのか未知数です。
「絶対何度も見返して、本当のエンディングまでたどり着いてください!!そうすればきっとこの作品の評価が格段に上がることでしょう!」と言えるのか?
それとも、「何度も見ても時間の無駄かもしれません…」となるのか?
とりあえず2周目を鑑賞してみようと思います。
↓↓↓
(2回目視聴後の感想)
2回目視聴しました。
というか、1回目視聴した時の選択肢を色々と避けつつ、色んなエンディングを回収するように、色々試してほぼ全通りのエンディングにたどり着きましたので、2回目というよりかは全部試した後という感じです。
その感想なんですが…
ちょっと物足りないように感じました。
アドベンチャーゲームのように選択肢によって主人公の運命が分岐してストーリーが展開していくというのは、非常に素晴らしい発想だと思うのですが、主人公も最後そのように語っていましたから、それはまあそういう風な造りになっているといったらそれまでなんですが、視聴者が選んでいるようで、結局その結末にたどり着くようにしかならないようになっているみたいな。
結局そこらへんに集約していくしか無いんだな〜という物足りなさがありました。
2回目以降はほんとにシーンの回収作業という感じで、10秒早送りを多用しつつ、なんのためにやっているのかと若干虚しくなるのは、中年となってしまった人間のファンタジーの無さですね。
もっと若い頃なら、攻略情報的なものも見ずに、没頭して色々試してみたのかもしれませんが、中年以降の大人には、刻一刻と死ぬまでの時間が迫ってきているという切迫した悲しい観念がありますので、どうにもファンタジーやゲームに没頭できなくなってくるという感じがどうしてもあります。
まあそんなことよりバンダースナッチのことです。
物足りないと感じた最も大きな原因として、大きな謎解きとか、仕掛けが無いというのがあると思います。
視聴者は色々選択肢を選べますが、別に色々頭を悩ませて考える必要が無いんですよね。
あそこでああ言ったからここでこれを選べばフラグが立って次こんなイベントが起こって、最後に大きな謎を解く鍵になるとか、そういう視聴者が試される場面が無く、ゲームをやっているという感覚はありません。
もしそういう、昔のゲームみたいに、メモ帳に色んな情報をメモしてあーでもないこーでもないと悩んだ挙句に、導き出したキーワードなんかを入力すれば、すごいどんでん返しの隠しエンディングが見れるみたいなことがあったら良かったのにな〜と感じました。
映画のストーリーを自分の選択で進められるというコンセプトがあまりに魅力的だったために、もったいないという感じがすごくしました。
でもとりあえず視聴?プレイ?してみる価値はあると思いますよ。
ネタバレあり結末・ラスト・考察・感想
⚠以下ネタバレを含むので視聴前の方はご注意ください。
一番思ったことをまず書かせてください。
あの電話番号を入力する場面。
あそこでもっと別の秘密の番号をダイヤルしたら、シークレットなエンディングに進むルートを用意しておいてくださいよ!!
えらい思わせぶりじゃないですか。
コリンの唐突な「メモしろ。」という発言。
各所に見られる思わせぶりなカメラワークや小道具。
「すべては符号だ。数字が聴こえてくるだろ?」とか言われたら、なんかすんごいキーワードが隠されていると思うじゃないですか…
バスに乗っているシーンでは、『Matey』と書かれた看板に分岐のシンボルと「No future」という落書きがされています。
ステファンが「ハッ」ってなって起きる日付の7月17日とか8月3日とか8月20日とか意味あるのか?とか、8時30分に起きるのに意味があるのか?とか、物語が始まる1984年7月9日に意味があるのか?サンジュニペロ病院のドクターヘインズの診察室Room 3に意味があるのか?とか思いますでしょ。
ちなみにこの1984年7月9日というのは、タッカーソフトウェア社のモデルとなっているイギリスのゲーム会社Imagine Softwareが膨れ上がる債務から倒産し閉鎖された日付のようです。
このImagine Softwareは、Bandersnatchという革新的なゲームの開発・販売を目指している途中に破綻しており、物語のエンディングともリンクする場面があります。
このImagine Softwareの創設者の中にマーク・バトラーという名前があります。
が、ともかくこれらは電話番号には何にも関係しません。
そんな元ネタはただのトリビア。
「へー」で終わりです。
面白い仕掛けに繋がったりしないのかよ!という気分になります。
ただ、8時30分に「ハッ」ってなって起きてしまうのは、8時30分の電車に乗り遅れて8時45分の電車で事故った母親のトラウマがあるので、ちゃんと意味は用意されててよかったです。
また、主人公のステファンは、妙にタバコに苦手意識を持っているようでした。
父親がタバコを灰皿で消すところを、いかにも意味深なカメラワークで映したり、タバコを消した後の手で握手を求められて「肉汁がついてる」と避けたり、コリンに巻きタバコを勧められて「吸ったことがない」と難色を示したり。
しかし、そのタバコ苦手属性が何か意味があるのかと思いきや、思い返してみると何にも繋がらないんですよね。
灰皿で父親を殴るという以外に、あれにはこんな意味がある、と知ってらっしゃる方はぜひご教授願いたいものです。
他にも不完全燃焼な部分はあります。
目玉がメモリを食い過ぎるとか、コリンのマンションで薬を飲んだ後コリンの目玉がパックマンのゴーストみたいにギョロッとなってたり「えらい目玉押しやないの」と思わせられますが、目玉は特に意味無いですよね。
そのコリンがタッカー社でステファンのデモを鑑賞してる時にいじくっている球体のようなもの、これは終盤ステファンに納品の催促の電話をするタッカー社の社長も弄んでおり、コリンに投げたりもしてますが、この球体はなんだったのかも気になります。
ティーをえらい押してくる父親にも「えらいティー押しやね」と思わせられますが、やっぱりティーも何にも関係無いですよね。
市販のタバコに含まれているというストリキニーネとやらは?コモドールはサウンドが良かったらしいがなんでステファンはやらなかったんだ?カジャグーグーって何?!とか。
全部ひっかかってみましたが、全部意味はありませんでした。
ちなみにカジャグーグーは1980年代のイギリスの音楽グループですが、それだけです。
トンプソンツインズとか富田勲とか、妙に音楽を選択させてきますが、これにもBGMの選択以外の意味は無いようで、それだけかいという感があります。
この映画をきっかけに逆輸入的に知りました、世界の富田勲さん、面白い人です。
ところでコリンのマンション、なんかすごく雰囲気良かったですね。
半円形のソファが凄かった。
壁にフィリップ.K.ディックの『UBIK』のポスターが貼ってあり、ハイになったステファンの視界でスプレーがモヤモヤしていました。
あのパックスが描かれた薬、断ったらどうなるのかとやってみたら、普通にティーに混ぜられて飲まされました。(ティー押し)
強要はしないとか言ってたくせにヒドい!!
パックスは運命を奪うらしいから仕方ないですか。
サトパルというキャラの弱々しさは軽くツボでした。
あんな外人いるんですね。
名前もサトパルだし。
いや、よく分かりませんが。
とにかく、メモが必要なほどの謎解きが存在しないんですよね。
メモして解き明かすような事がしたかった!
昔のゲームのあのロマンをもう一度味わいたい!
この作品はImagin Software社をモデルにしている他にも、バンダースナッチという架空の生き物をモチーフにしている絡みで、『鏡の国のアリス』を連想させる演出が各所に見られました。
うさぎの人形や鏡を使った仕掛け、赤い服や照明(赤の女王)などがそうですが、特に鏡を使った仕掛けは、ブラックミラーと完全にリンクしていて気持ちいいですね。
父親が幼いステファンに食べさせる紫色のお菓子も、何かとかかっているのかもしれませんが、『鏡の国のアリス』に詳しく無いのでよく分かりません。
そもそもバンダースナッチってなんなんだという話ですが、ぐぐったら出てくるように、ルイス・キャロルの詩『ジャバウォックの詩』と『スナーク狩り』に出てくる架空の生物で、姿形に関する描写が無く、単一の生物を指すのか、グループを指すのかさえあやふやな存在なのですが、基本的にはとりあえず獣のような怪物として登場します。
非常に俊敏で凶暴で”この怪物を止めることは時間の流れを止めるくらいに難しい”らしく、さらにこの獣に噛まれると、知識や記憶を食い尽くされるようです。
ただ、もう一匹出てくる化け物”PAX”とごっちゃになるんですが、ステファンが時々襲われたりするキモいのはパックスのほうで、このパックスとは、J.F.デイヴィスが妄想の中で生み出した怪物でした。
パックスは、”崇拝すると運命を奪う”という暗示的な性質を持っておりましたが、時々バッドエンドの袋小路みたいな場面で出てきて「シャー!!」とかゆってステファンを襲ってスタートに戻らせるみたいな役割でしかありませんでした。
つまり選択肢をひとつひとつ潰していって、至るべきゴールに視聴者を追いやるという役割だったのかもしれません。
ステファンもJ.F.デイヴィスも、極めて似たような精神状況に陥り、思考の穴のドツボに嵌って、同じような思考経路を辿り、現実と幻の区別が付かなくなり、マインドコントロールの陰謀を疑ったり、政府の陰謀を疑ったりした末に家族に手をかけるという結末が用意されていますが、そういった精神病の症状を指して、バンダースナッチにやられた的な感じに言っているんでしょうかね。
あの迷路を永遠と右に行ったり左に行ったりするゲームも、神経衰弱してきて頭がおかしくなりそうですしね。
J.F.デイヴィスと言えば、あの金庫のパスワードで、PACやTOYの他に、JFDと選択できる条件があるそうですね。
まあそれを選択しても、後ろからJFDが忍び寄ってきて襲われてやり直し、というだけのようですので、私はわざわざやり直してまで見ようと思いませんでしたが、ちなみにこのJ.F.デイヴィスは、Polybiusという2017年にプレイステーション4やVRで発売されたゲームの開発者で知られるJeff Minterによって演じられており、コリンのキャラクターもこのJeff Minterのパーソナリティからきている所が大きいようです。
このPolybiusというゲームも、何かと曰く因縁つきで面白いです。
作品の背景情報やトリビア的知識を色々述べてみましたが、やっぱりとにかくストーリーの展開が物足りないという結論は同じことで。
イースターエッグでいうならば、シロクマのシンボルや、サンジュニペロの名前を冠したクリニック、メタルヘッドやノーズダイブという最新作、ドクターヘインズの名前などが出てくる他、隠しサイトのQRコード(後述)なども登場します。
ノーズダイブはなんで目玉を回収しながら落ちていくゲームなんだろう?とか、コリンって夢か幻かもわからないような永遠と繰り返すステファンの悪夢みたいな現実の中で唯一連続性が保たれる超越的な存在でしたが一体何者だったんだろう?とか、キティの髪の毛はどうなっているんだろう?とか、パールの鼻輪はどうなっているんだろう?とか、サトパルは今頃どうしているんだろう?とか、気になることは満載です。
PACMANは操られる者という意味のようですが、このバンダースナッチという作品において、ステファンこそがPACMANだと思っていたら、いつの間にか視聴者こそがPACMANとなっていたみたいなことで良いんでしょうかね。
だって10秒早送りを繰り返して選択肢を選びなおして全部のエンディングを回収していた時の私って、完全に「こんなことやりたいわけじゃないんだ!!」という気持ちでしたもの。
父親を切断するエンドでは、ステファンは「選択肢を大幅に削って、プレイヤーが選んでいるようで僕が導いている」と言っておりましたが、たしかにこの作品にはプレイヤーが選択して変えられることなんてひとつも無かったようにも思います。
しかも選択しないという選択をしても、結局選択肢を自動選択させられる仕様となっていました。
それが今回、物足りないという感想につながる原因ともなっているのですが、ともあれ一つ筋の通った綺麗で知的な作品ではあると感じました。
複数の現実が存在し、一つの選択をすればその真逆の事が別の現実で起こる、というようなことを考えていたJ.F.デイヴィスやステファン、そしてコリンもそんなことを言っていましたが、しかしこの物語で一番のトゥルーエンドだとされている、母親についていく最期を見る限りは、結局現実は変えられない、一つであるという結論に至っているということなのかもしれません。
どうしようもない後悔、どうしようもない現実に打ち負けたステファンは、現実を変えていくことを辞め、過去を変えて現実の自分もそこに付いて行ってしまったということなんじゃないでしょうか。
実は初め1回目に視聴した時、何も考えずに適当に選択していってたどり着いたエンディングがこの終わり方でした。
あまりに意味が分からず、何度も見直して咀嚼していくうちに、なんとなくそんな感じで、まあ良かったのかな〜という気持ちになってきました。
話は飛びますが、コリン・リットマンという名前は、Jon Ritmanという実在するプログラマの名前から由来しているというのが有力なようです。
1980年代のZX Spectrumというホームコンピューター向けのゲームプログラマとして知られています。
隠されたエンディングでステファンがバスの中で「バンダースナッチ:デモ」というカセットテープを聴くと流れる、不愉快な機械音がZX Spetrum向けのテープ音声データとなっており、これを読み込むとQRコードが生成され、それをリーダーで読めばバンダースナッチの隠しサイトにアクセスすることができます。
しかもそのサイトでは、コリンが作中作っていた『Nohzdyve』のZX Spetrum用ファイルもダウンロードでき、ZX Spetrumエミュレーターを使えば実際にプレイもできるそうです。
ちなみにそのQRコードとはこちら。
誰かが必ず死んでしまう悲しい結末ばかりの今作ですが、ひとつとっておきの隠しエンディングとして、バカみたいに明るいハッピーエンディングも用意しておいてくれると良かったな〜なんて思います。
その鍵となるのはやはりあの電話番号で、何度も周回してメモしまくった視聴者しかたどり着けないキーワードを打ち込むとそのルートに乗る、みたいなのをやってほしかったです。
さて、長くなりました。
こんなに書いたけど評価は星6つ。
話題性だけの残念な仕上がりだね★と、MICROPLAYの評論家なら言ったでしょうか。
全てのエンディングを見たい方はこちらのサイトが参考になります。
シーズン4第六話『ブラックミュージアム』の感想はこちら。
ブラック・ミラー全話まとめ
『ブラック・ミラー』シリーズの記事はこちらにまとめていますので、ぜひ併せてご覧ください。
シーズン5『バンダースナッチ』予告編youtube動画
『バンダースナッチ』予告編